新型コロナウイルス感染症禍中、病を持つ人に想いを寄せ、安全で安心できる医療を考える

2020/07/09


東京都西東京市を中心に精神科医療を提供する薫風会では、山田病院、田無メンタルクリニック、訪問看護ステーションメロディの他にも、認知症支援、障害者支援、地域活動支援など地域に必要な支援を行う組織です。
新型コロナウイルス感染症の最中、医療機関ではどのような対応がなされ、新しい時代に向けて何を準備しているのか。「医療機関はインフラですから、社会的役割として仕事している意識でいます。」と語るのは、医療法人社団薫風会・山田病院 事務部長の山田大志さん。どのような変化にもスピード感を持って対応する薫風会の取り組みについて伺いました。

医療法人社団薫風会・山田病院事務部長 山田大志様

ご略歴

病を持つ人に想いを寄せ、安全で安心できる医療のために

今回の新型コロナウイルス感染症に対しての病院の考え方として、とにかく病院にコロナを入れないのが、第一優先になります。一番最初に病院の出入り口を1カ所にしました。病院の正面の入り口1カ所に集約して、そこで検温と、手指消毒、問診を必ず実施することをすぐにはじめました。

外来については4月初旬ごろから、薬を長期で処方したり電話診療も可能になったので、外来自体に足を運ぶことなく医療を提供できる体制となりました。

救急に関しては、患者さんが濃厚接触者と接触しているかどうか分からない状況で病院に来られるので、かなり慎重に対応しています。効率が悪くなってしまうのですが、救急病棟の個室対応が必要でも最低5日間経過観察しないと、他の病棟に送らないシステムにしています。

また、現在売店も外来の患者さんは利用不可としています。売店というエリアは入院患者さんと外来患者さんが接点を持てるところでもあります。そこが接触ポイントになって院内に感染が広がってしまわぬよう、外来患者さんを使用不可とし、入院患者さんもオーダー制にして売店のスタッフが入院患者さんのお部屋に運ぶシステムにしました。

面会については始まったばかりですけど、今は対面できないのでiPadを2台用意してFaceTimeでオンライン面会(非対面接触)の対応をしています。先日も病院の廊下でご家族が歌を歌いはじめて外来がざわついていました(笑)。新しい取り組みではありますが、ご家族にとっても患者さんにとってもテクノロジーを使って顔を合わせることが本当に大切なことだと改めて考えさせられました。

本当に知恵を絞って、ないものを何とかしたりしています

全ての想定をし早い段階で職員に伝えたことが安心につながる

職員に対しては、かなり早い段階でコロナに感染したらどういう扱いになるか、家族で濃厚接触者がいたらどうするか、就労面・補償面などかなり細かく伝えました。そういった対応もあったので、職員にとっては安心だったようです。

職員のリソースでいうと、該当者はたくさんいなかったので、面談したのは3人ぐらいでしょうか。「保育園が時短になったので、朝は問題ありませんが、早く迎えに行かなきゃいけない。」という夫婦職員がいて、どちらかが時短となり迎えに行きたいとの申し出がありましたが、病院サイドも職場の仲間も全く問題ないということでそのまま受け入れました。ただ別の看護の方で、ご主人が常駐のかたちで出張に出てしまい、家に帰れない状態になってしまった方がいました。子どもが4人いらっしゃるので、その方は休職することになりました。もう一人は、ご夫婦で当病院で働いている方で、保育園が休園になり、奥さんが妊娠中で予定日も近い状態でしたので、1~2週間有休対応でお休みとしました。医療従事者として責任感が強い方が多く、職員の人のリソースに関しては特に問題にはならなかったです。

本当に知恵を絞って、ないものを何とかする

現在、職員のサポート体制についてもCNSと臨床心理士さんが相談窓口になってくれています。お子様がいらっしゃる方がお休みになってしまった場合、職員が新型コロナ感染症に感染してしまった場合、患者さんの入院時の流れ、相談窓口など、サポート体制について早い段階で全体に説明を全てしたことが良かったと思っています。こういう場合は労災になります。こういった場合は傷病手当もらえます。そんな風にかなり細かく伝えました。その辺は職員にとって良かったみたいですね。

救急の場合必ず個室に入ってもらうお話をしましたが、看護師さんはみんなガウン着て、一つ処置終われば全部捨てる。やっぱり最初はみんなピリピリしてたみたいですけど、今は慣れたようです。それにしても今はなかなかガウンが手に入らなくて困っています。自作していますよ。ごみ袋チョキチョキしたものを着たりしています。本当に知恵を絞って、ないものを何とかしたりしています。

効率化が進むとコミュニケーションは希薄になる

新しい教育の模索が続く

採用状況については3月に入ってコロナが盛り上がり始めた頃に、看護助手の応募が増えてきました。今まで世の中の景気が良く、看護助手は採用しづらい状況でした。看護の採用やインターンについては病棟案内ができないのがネックになっています。今更ですがGoogleストリートビューとかで建物の中に入って見えるシステムとかあったらよかったかなと。やっぱり、院内の雰囲気とかが伝わる手段は患者さんだけじゃなくて、採用にとってもあったほうがいいかなと思っています。インターン研修についてはお互いにとってお互いをお試しで知るよい制度だと考えていますが、今はなかなかできない状況で今後の課題となっています。ちなみに、オンライン面談という話は出てきています。実際事務仕事側のほうの会合は、Zoomが多くなっている印象ですし、この方法でいいのかも知れないとみんな気づきはじめていると思います。

集合教育については現在一切やっておらず、これからどうするのかいろいろ検討してます。新入職の研修は約1週間ぐらい行いますが、席を大きく離して窓全開でやっています。でも、オンライン教育は間違いなく始まると思います。教材で出してるところも既にあるので、オンラインで見てもらうものは徐々に出てきていますね。既製であるものも組み合わせつつ、院内制作が始まっています。副院長がコロナの勉強会のビデオを作って、それを1週間ぐらい講堂で一日中流し続けて、空いてる時間に見に来てくださいということを行いました。ガウンテクなどの動画を流して、必ず2回見に行くようにとアナウンスをし、出欠も付けて閲覧を促しました。こんな風に集合教育は変わるかもしれないですね。

連携の希薄は考え方に影響

ITツールについては、例えばiPadのようなツールは情報を伝達するメディアとして考えるんだったら、やはり有効ですよね、確実に。院内組織としての情報伝達に関して、会議自体は、余計なものが結構減りました。法定の委員会活動が今はほぼメールベースになりました。今までやったことをツールで代替えし、意外と効率よくできるなといった感じです。

ただ、人が集まれないので、職員同士間の連携(コミュニケーション)は希薄になってきています。新入職など、年に2回教育会を行っていて、会の終了後に行う飲み会の中で他の部署の職員にどんな人がいるのか認知していましたが、今は全然分からなくなっています。顔は知ってるけど名前分からないなとか、誰だろう?っていう方もいたり。これはちょっとどうにもならない感じはあります。目の前のところは分かるけど、広くが認識しにくくなっているような気がします。若い子は、例えば委員会で60歳を超えた看護師さんとかと知り合えて、勉強できることがありますが、そういう世代を超えたコミュニケーションが減るんじゃないかなって気しますね。
この状況が長く続いた場合、考え方も案外浅くなっていくのではないかと懸念をしています。

希薄になるものを補完することを考える

今は今の対応で精いっぱいで、その先に見えてくるものは何なのかっていうところまでは、まだ行ってない感じがします。基本的に医療現場には患者さんがいます。患者さんに向き合い対応するっていうのは、多分、普遍的であんま変わりようがないんですけど、逆に言うとわれわれ事務方のほうが、その先を提案していかなきゃいけないのかもしれませんね。

先程お伝えした、人間関係が希薄になるんだったら、それを補完するものは何なのかとか、そういうことををやらなければいけないと思います。人間関係が薄くなると、組織全体で学習していく能力って、僕は下がると思うんですよ。よくラーニング・オーガナイゼーションという考え方がありますが「考える組織」、例えば、これまでの経験を共有する場面が減るかもしれません。看護の場合、例えば誰かのミスは、誰かの過去のミスという可能性があります。そういうことを先輩後輩で考えることが大切だと思うんです。希薄になるものは、何かで補完していけるのか。そうゆうことを考えていきたいです。

医療は地域のインフラ社会的役割を改めて感じる

東日本大震災の後、精神科への相談が増えました。今回もいろんなことでメンタル的に限界にきている人は多いと思います。ただ、4月は自殺がすごく減ったようです。主な原因として考えられることはテレワークや学校の休校で会社に行かない、学校に行かないということで人間関係に負荷がかかっている人が休めたのかもしれません。逆に解除になったときにどういう反応が出るのかはわかりません。今後の経済活動がどうなるかは注視すべきポイントだと思います。やっぱり景気と精神科の相談件数に相関関係はあるように感じます。

今は先が見えないことは、とても不安定なことです。

医療ってやっぱり地域のインフラです。このような状況下の中で先を考え実行しながら、社会的役割を果たしていきたいと考えています。

病院採用のムダを、ゼロに。

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